「あークソ寒ィなぁおい…」
キリヲはイライラと貧乏ゆすりをした。
暖房器具が一つもない狭いアパートの一室屋では動いていないと凍えるように寒い。
「おーい…お前の父ちゃんと母ちゃん、いつ帰ってくるんだ?」
子供は返事もせず部屋の済みで膝を抱えて座っている。
十歳くらいの妙に色素の淡い少年で、肌は青白く、顔に掛かる欝陶しい長い髪は茶色っぽい。
ガリガリに痩せている割に手足がやたら長く、アンバランスな印象をあたえていた。
「…ったくよォ…」
頭をバリバリと掻いて爪に入ったフケをフッと吹く。
時計を見ると12時半、組からの連絡はまだ入ってこない。
いい加減帰るか、と腰を上げた瞬間、目の前のローテーブルに置いていた携帯が振動した。
子供がチラリとこっちを見たがまたすぐに目を反らした。
着信を見るとキリヲの数多い舎弟の内の一人だ。
通話ボタンを押し、携帯電話を耳に当てる。
「おオ、どうだ?」
『すんません兄貴、若い衆つこて探させてるんでっけどなかなかみあたらんのですわ』
「しょうがねぇな…何か解ったらすぐ電話しろや」
『ハイッ!アシついたらすぐに連続させてもらいます!!』
キリヲは舌打ちして電話を切ると直属の上司に電話を掛けた。
『どないや』
「どないやって言われてもよォ。見当もつかねえもんは探しようがねぇわな」
『ガキがおるんやろ。今晩迎えにくるかもしれん。お前そこおれ』
それだけ言うと電話は切れた。
「どいつもこいつも勝手だよなぁ…なァ?」
部屋の隅っこにいる子供に向かって声をかけるが反応はない。
子供とは昼過ぎにここに来てから一度も口を聞いていなかった。
コンビニで夕飯のおにぎりを買ってきてやっても何も言わず、礼ぐらいいえやと一発小突いたが無言で飯に食いついていた。
そういえば前回の取り立てのとき、ガキの前でガキの父親をかなりの勢いでシバき回してしまっていたから自分が嫌われてるのは仕方ないだろう。
「ま、とにかく今晩はここに泊まるからよ、布団しいてくれや」
これも無視するかと思っていたが意外にも子供は素直にどこからか掛け布団を持ってきた。
「敷き布団はねぇのか?」
子供は畳の上の薄いカーペットのようになったものを指さす。
「これだけかよ…」
この布団だけで家族三人が眠っていたと思うと感心してしまう。
真冬の安アパートでこの布団では風邪でもひきそうだがしょうがない。
そう諦めて電気を消すと布団に横になる。ふと子供が膝を抱えて座ったままなのを思い出した。
「……お前も入れやァ」
子供はまたもや素直に従いするりと布団のなかに入ってきた。
狭いので布団から出ないように子供をだっこしてやると痩せた体のひらべったさに驚く。
筋ばった子供を抱きながらキリヲにふと疑問が沸いた。
「お前そういや名前なんてえんだ?」
「………グンジ」
それだけポツリと答えるとすうすうと寝息を立てだした。
最初こそ冷たかったものの徐々に二人分の体温で温かくなってくるとキリヲも子供と共に眠ることにした。









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