「……何処まで行くんだ?」
「ンなことどーでもいーだろ〜」
グンジに手を引かれ、ビルの間を歩く。
さっきまで気絶していたところを急に起こされてここまで連れてこられた。
なんとかTシャツとジーパンは着れたが、靴を探してもみつからずサイズの全く合っていないキリヲの靴を履いてきたために足が地面につかえて歩きにくい。
「…ったー!もっと早く歩けよ!」
のろのろと歩く俺にグンジがイライラと声を荒げる。
靴のせいもあるが、疲労と空腹と毎晩のように痛め付けられた下半身のおかげで力が全く入らない。
俺は歩くことがこんなに体力を使うことだと初めて知った。
「ま〜、このへんでいっかあ」
屋敷からは数百メートルあたり離れただろうか?
人気の無いトシマの、より人気のないエリアにあるビル街につくとグンジがピタリと足を止める。
「…ここで俺をどうするんだ」
さっきから俺の頭には恐ろしい想像が浮かびつつあった。
グンジが俺を逃がすメリットがない。
ここでグンジはキリヲに見つからないように俺を殺す気ではないか?
この前のキリヲとグンジを見るかぎり二人は深い関係のようだった。
恋人を取られたと思ったグンジが怒って俺を殺すのは自然な動機だ。
ニヤついた表情を浮かべたグンジが俺を振り返る。
ゆっくりと俺に延ばされる鉤爪ナックルの腕に、俺はついに殺されるのかと恐怖でその場に凍りついた。
しかし、その腕は馴れ馴れしい態度で俺の肩に回され、あまつさえ空いた手で犬猫にするように俺の頭をくしゃくしゃと撫でてくる。
「んな顔すんなよー、俺らジジイ経由で兄弟じゃん!仲良くしようぜ?あ、この場合シスターっつーほうが正しいかなぁ?どー思う〜?」
「………」
処刑人にまともな感覚を求めるのは無理な話だがゲラゲラと笑うグンジに俺は呆気にとられていた。
「なぁ…ちょっとしたゲームしねぇか?お前勝ったらさ…ジジイから逃がしてやるよ」
急に笑うのをやめ真剣な顔付きになる。いつもの間延びした喋り方も無い。
「ルールは簡単だぜ?今から百数えるからその間にテメーは逃げろ。」
要は鬼ごっこか…。
この体力で逃げ切れるかどうかは怪しい。
処刑人のことだ、捕まるとただでは済まないだろう。
しかし、このままキリヲのもとに居続けるくらいなら…。
万に一つでもいい、逃げれるのならやるしかない。
そう思った瞬間俺は走り出していた。
「あー!まだスタートって言っねぇだろ!まぁいいけどよ…。」
いーち、にーぃ…
背後で処刑人が時間を数える声を聞きながら全速力で走った。
…ごー、ろーく…
俺は痛みを訴え続ける体を無視し、走り続ける。
…じゅーう、…?……???
すでに足が縺れだす。まだだ、まだ走れる。しかし次の瞬間俺は自分の耳を疑った。
…!…にじゅーう…さんじゅーう…
ちょっと待て!と叫び出したい気持ちを必死に押さえ、近くの廃ビルに滑り込む。
このまま走り続けていてもあと十秒もないのでは駿足の処刑人からは逃げ切れ無い。
ここに気付かず通り過ぎてくれれば……
ふと、大きな影が落ちる。
ゆっくりと見上げた表情は愉悦に歪んでいて………
NEXT/BACK